『ひみつのアッコちゃん』オリジナル版について

 2017年現在、書店で入手可能なひみつのアッコちゃんの単行本の代表格というと、恐らく表題の「『ひみつのアッコちゃん』オリジナル版」全4巻(以下オリジナル版)ではないだろうか。このオリジナル版というのは、2009年に刊行された「完全版」の廉価版(内容は同一)として、2012年に発売されたものだ。ここでその完全版の方の売り文句を引用してみよう。

変身の呪文は「テクマクマヤコン」じゃなかった?
アッコが持つ魔法の鏡は、コンパクトじゃない?
オリジナルマンガのアッコちゃんでは、新しい発見がいっぱいです。
発表当時の原稿にこだわった完全版が単行本で登場!

『ひみつのアッコちゃん』完全版で刊行! | トピックス

赤塚不二夫の代表作「ひみつのアッコちゃん」が、『りぼん』連載時のオリジナル・バージョンでよみがえる。

ひみつのアッコちゃん 完全版 1/赤塚 不二夫 - 紙の本:honto本の通販ストア

とあるように、初出である『りぼん』掲載版と同一の収録であることが大きなセールスポイントになっている。

 ところで「初出」とか「単行本収録の際に修正」みたいな言葉を気にする人って結構多くて、俺もその一人だ。その作品が初めて世に出て人々の目に触れた時の、そのバージョンを読んでみたいってマニア心があるからだ。だから、赤塚漫画の中で指折りに好きなひみつのアッコちゃんが初出で収録されたこの完全版が出た時は、すごく嬉しかったし有難がって読んでいた。

 ところが数年後、その廉価版のオリジナル版が発売される時の売り文句はこうだ。

第1期連載分の全48話に加え、
第2期連載分からはストーリーが重複していない4話を収録した、
まさに初期『アッコちゃん』の完全版です!

最も初出状態に近い単行本、
きんらん社版(全4巻)、曙出版A5版(全6巻)を底本に使用し、
オリジナルに近い『アッコちゃん』を再現しています。

廉価版『ひみつのアッコちゃん』 全4巻が発売中! | トピックス

今回刊行されるオリジナル版は、2009年に河出書房新社より刊行された「完全版」を、手に取りやすい値段にしたもので、「かがみの国のおつかいの巻」「わたしのひみつをおしえるわの巻」「スターになあれ!の巻」「だいじなカガミがなくなった!!の巻」の全4巻。完全版は、改変が加えられる前の原稿が持つ魅力を改めて提示するという編集方針のもと、これまで単行本化されたことのないエピソードをすべて発掘し復刻されていた。

赤塚不二夫「アッコちゃん」原稿改変前のオリジナル版刊行 - コミックナタリー

 これらを一読して分かるように、初出云々の問題に関しては先程と比べて曖昧な表現に変わっている。これが刊行された時点で、うっすらと単行本収録時の修正を疑っていたのだが、先日遂に明らかになった。

 数日前、ひみつのアッコちゃんの掲載雑誌を入手することができたので、オリジナル版と比較してみたのだが、残念ながら修正されていた。

 対象エピソードは『メリークリスマス』『なかなおり』『こんばんはサンタだよ』の3編(初出:「りぼん」1962年12月号ふろく)

 これらは表題が分かれているが、話としては一続きになっているため、1969年に虫プロ商事から単行本が出た時点では『クリスマスのなかなおり』という題で統合されている。

 オリジナル版はきんらん社の単行本(60年代刊行)が底本となっており、初出と同様に3編のまま収録されているが、細かい点で差異を見つけることができた。以下比較として本編より引用する 。

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 最初の2枚が初出の「りぼん」1962年12月号ふろくで、3枚目がオリジナル版1巻192-193ページである。一目見て分かるように初出では見開き4ページ使って描いていた部分を、オリジナル版では2ページに纏められている。特に最初の2ページは単なるコマの切り貼りではなく新たに描き直しているので、これは明らかに「単行本収録の際の修正」と言えるだろう。

 ここ以外にも初出との差異はある。
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 こちらはオリジナル版1巻214ページより引用。

 この最終ページも大きく修正されていることが分かる。最終ページというのは読後感に関わる重要な部分であるため、この修正は看過できない。初出ではアッコは3人と同じ方向を向いていて、円の大きさもそう変わらないため、眺めていて4人の会話を自然にくり抜いたような印象を受ける。一方オリジナル版では、明らかにアッコが強調して描かれているため、3人の会話を受けて感じたアッコの心情が主体になっているように見える。(個人的には前者の方が好きなのだがそこは人の好みの問題なのでまぁいいとしよう)

 

 今回発見した修正箇所はこの2つだけなのだが、オリジナル版全4巻となるとかなりの量が見つかると思う。完全版からオリジナル版に切り替わる際に、売り文句が柔らかい表現に変わったのは、間の期間に同様の考察をした人がいたからだろう。

 ここまでいろいろと述べてしまったが、言いたいのは「『ひみつのアッコちゃん』オリジナル版」はオリジナル版というより準オリジナル版に近いということ。しかし修正箇所というのは(俺が確認したエピソードでは)漫画雑誌によくある欄外記事削除に伴うコマ移動とそのコマの修正に過ぎないため、人によっては「オリジナル版」でも通してくれるかもしれないということです。